くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

従業員動態分析からの発展。 業績に繋がる人事施策を考えるときのポイント

山本遼

 前回は従業員動態分析で5年・10年先に見える未来を予測しましょうという話を書きました。

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今回は、将来の人員数増減に応じた打ち手を考えていきます。

 そもそも、企業において考えるべきことは何でしょうか?成長企業だろうが、現状維持を目指す企業だろうが、IT企業だろうが建設業だろうが、全ては一つに集約されます。企業目標の達成です。そのため、人事施策を考えるときは企業目標を達成するために人事は何をするべきかと言うことを考えることが重要になります。

 今回は売上高と従業員数を繋げて考えるためのアイデアをご紹介します。(最終的には利益を出すことが必要になるわけですが、利益は売上から諸々引かれた結果出るので変数が多く、打ち手がぼやけやすくなるため)

 

問題を分解して考える

売上高は従業員数×一人あたり売上高 と分解することが出来ます。 例えば、今は1000人で100億円の売上高を生んでいる企業の場合は、1000人×10百万円で100億円です。


グラフにすると以下のようなイメージです。縦軸に売上高・横軸に従業員数を取っています。

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同じ企業が「5年後も売上高は100億円を維持する」という目標を立てたとします。一方、従業員動態分析をした結果、5年後に従業員数は900人になるっぽい、ということが判りました。
つまり、以下のように点が移動することになるわけです。

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売上高を100億円稼ぐためには、以下の線上のどこかに居なければなりません。
1000人ならひとりあたり1000万円。
500人なら一人あたり2000万円。
2000人なら一人あたり500万円。
900人なら一人あたり1111万円となるわけです。

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 すると、やり方がみえてきます。大きく分けると「人を増やす(右に行く)」か「一人あたりの売上高を増やす(上に行く)」の二つです。もちろんどちらもやる(右上に行く)というのも手です。

それぞれどのようなやり方が考えられるでしょうか。

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従業員数を増やすには?

まず一つ目はグラフで右に移動する方法を考えます。つまり、従業員数を増やすにはどうしたら良いかと言うことを考えるわけです。
 将来の従業員数は、今居る従業員+入社ー退職で計算することが出来ます。要は「入社の数を増やすか」「退職の数を減らすか」であるということが考えられます。

入社数を増やす

 入社の数を増やすのは、新卒採用をする・中途採用をする・採用以外の方法で増員をする、の3種類です。採用以外の方法で増員するというのは、例えばM&Aを行なう・出向で受入れるという方法があります。

退職数を減らす

退職の数を減らすには、途中で退職してしまう人を減らすということも挙げられますが、定年を延長して会社に留まる期間を長くするという方法も考えられます。途中退職を減らすのは、従業員が退職する理由を調べて無くすことがポイントになります。

 

 

冒頭で説明した「今居る従業員+入社ー退職」という数式は、人事担当者なら敢えて言うまでも無いような当たり前の計算ですが、このように、わざわざこうやって分解すると、気付かなかった所に気付きやすくなります。

 

一人あたり生産性を上げるのは?

 次に、グラフで上に行く方法を考えます。従業員数を増やさず、一人あたりの売上高を増やすことを考えるわけです。
 一人あたりの生産性を考えるには、AMO理論を使うと考えやすくなります。AMO理論とは以下のようなものです。

AMO理論というのは

Performance(業績)をPとおいて、P=f(A,M,O)という算式で表されると考えられているものです。AはAbility(能力)、MはMotivation(意欲)、OはOpportunity(機会)の略で、能力と意欲と機会、そのどれか一つでも欠けたらダメという考え方。のことです 

 

※ただし、AMO全て揃っても売上高にストレートに繋がらないこともあるので注意

 

Ability(能力)を高めるためには、例えば研修・営業ロールプレイや、普段の業務から学べる仕組みを作るということがポイントになります。

Motivation(意欲)を高めるためには、職場環境の改善や、報酬体系の変更(自身の業績が自身の報酬に反映される度合いを高めるなど)といったことが考えられます。
Opportunity(機会)を高めるためには、若手のうちから抜擢するとか、生産性に繋がらない業務を排除すると言うことが考えられます。あるいは、間接部門(人事や経理や総務など)から、実際に売上を上げる部門に異動させるという方法も考えられます。

AMO理論以外で生産性向上を考える方法

 また、AMO理論以外の方法として、「そもそも、今の事業より高い付加価値を生む事業に転換していく」という方法も考えられるわけです。

 例えば、IT系の企業ならより上流工程に移行していくということも考えられるわけです。現在プログラムをしている人たちが、要件定義をするところにうつり、IT戦略のところまで行けるようになれば、一人あたりの売上高は増えていきます。
 そのためには、働き方改革などで現在の業務に掛かっている時間を削減し、空いた時間で研修をする・受けさせる・新しい業務に挑戦させるなどを行なって、より高付加価値の業務にシフトさせていくわけです。

様々な事業に取り組んでいる企業の場合は?

 今回は、話を簡易にするために単一事業で話をしましたが、事業部制を敷いているなど、複数の事業をされていることがあると思います。もちろん、事業部毎に計算することは重要です。しかし、先ずは会社全体で作ってみることをお勧めします。なぜなら、事業毎に利益水準が異なるからです。
 一つの事業部が凄く儲かっているのに人手不足な一方、もう一つの事業部が赤字で人あまり、という状況だと、赤字事業部から人を抜いて行くことを考えることが必要になるでしょう。
 しかし、事業部毎の分析をしてしまうと、「赤字事業の中でよりマシな事業に移るにはどうしたらよいか」といった考え方に留まってしまう可能性があるからです。赤字事業の中でよりマシな事業と、自社の強みを存分に出せている黒字事業とでは、どちらが利益に繋がりやすいのか。折角従業員動態分析をして企業全体の視点で考えたのですから、先ずは企業全体として考えることを優先するべきです。

 

今日のまとめ

売上高を人員数と一人あたりの売上高に分解すると打ち手が見えやすくなる。
そのためのイメージはグラフにすると良い
人員数を増やすか・生産性を上げるかで施策が変わる

 

 

よいクリスマスを!

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