くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

新人研修設計にあたって認識するべき大きな変化 2+α

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 2月になったため、そろそろ自社でも新人研修の準備を進められている企業が多いのではないでしょうか。新人研修の設計をする際「過去や他社はどんなことをやっているのかな」ということを確認するケースが多いようですが、それだけだとなんかシックリ来ないなぁ、という感じになってしまうことが多いです。

 では、何の確認からするべきかというと、①事業環境や経営方針の変化 ②新入社員のマインド・考え方の変化の二つです。何故なら、これらを理解しなければ経営に役立つゴールは得られづらく、新入社員への効果が限定的になってしまうからです。

 

①事業環境や経営方針の変化

 事業環境や経営方針の変化は、まさに「企業ごとに異なる」ことが多々ある為、この記事で全てを網羅することは難しいですが、多くの企業で共通していることの一つ目は、人生100年時代の到来により定年年齢が確実に上昇するであろうということ(現在の新入社員である20歳前後の方々は恐らく70歳以上まで働くことになるでしょう)。

 一方で、顧客のニーズは多様化・高度化していることから、一昔前のように「とにかく愚直に頑張れば売れる」というケースは少なくなっていくと思われます。そのため、ここから言えるのは

・現在の新人がいくつになっても求められ続けるようなマインドを身に付けること。

・多様化したニーズを把握し業務に反映するため、効率的な情報収集と深い検討が出来ること。

・高度な専門性を身に付けるため、生涯にわたって学習し続けること。

 が必要だと言えそうです。

 

②新入社員のマインドや考え方の変化

 新入社員のマインドや考え方の変化については、研修担当者の皆さんなら肌感覚がおありのことと思いますが、メンタル不調になりやすいということが第一に挙げられます。背景には、彼らが厳しい指導を受けずに育ってきたから(彼らの言葉で言えば、昭和が異常だっただけ、なのかも知れませんが)といったことが挙げられます。

 また、離職の決断が早いということも挙げられます。こちらは、転職エージェントの積極的な広報活動などによって転職が当たりまえになったということに加え、彼らが大幅な経済成長を経験してこず・逆にリストラやブラック企業報道に多く触れながら育ってきたと言うことが挙げられそうです。そのため、ここから言えるのは

・ストレスへの認識を改め、コントロールすること

・会社の成長と自分の成長をリンクして考えられること 

 が必要だと言えそうです。

 

+α

 最後に、忘れられないのがコロナ禍への対応です。緊急事態宣言は継続の見込みとのことですが、さらにその後どうなるかは不透明な状況です。そのため、2021年度の新人研修では、リモート開催を視野に設計しておく必要があるでしょう。

 昨年は多くの企業で臨時の感染防止策を打った上で新人研修が実施されました。非常に大きな部屋で離れて着席して実施したり、常に窓を全開にして実施したり・・・と、急拵えながら、各社様々な取組をされてきました。

 しかし、2020年入社の新人の成長にはばらつきが見られてしまっているようです。昨年の同時期は、マスクや消毒液の品薄や情報不足などもあり、「あり合わせ」での実施もやむなしではありましたが、1年経過した2021年入社の新人に対しては、ある程度しっかりした対策を行っていく必要があります。

 

研修のご相談は:

sele-vari.co.jp

学校法人が晒される外部環境と、生き残るための経営の方向性(2020年度版)

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2020/11/11に人のための人事制度改定セミナー」として、人事制度のセミナーを行いました。
今日はその内容の第一部についてご紹介していきます。

 

セミナーのコンテンツ

1.学校法人を取り巻く環境変化と経営方向性 ←今日のコンテンツはここ
2.学校法人の人事の特徴
3.人事制度の改定方向性
4.着実に変えていく為の人事制度改定プロジェクトの在り方
5.制度改定が難しい場合は、「運用改善」から
6.事例紹介
7.会社案内

 

1.学校法人を取り巻く環境変化と経営方向性

 学校法人を巡る経営環境は大きく変化しています。まずはその変化を整理していきます。 外部環境分析では、5force(ファイブフォース)分析という枠組みで整理すると判りやすくなります。 5force分析は、マイケルポーターという経済学者が提唱したもので、企業に影響を与える要因として「同業他社」「購買者」「供給者」「新規参入者」「代替製品」の5つに着目するという考え方です。

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1-1.購買者の動向

 学校法人における購買者は、主に学生/生徒です。こちらについては、言うまでも無く少子高齢化の影響をモロに受けることなります。18歳人口は約105万人であり、1992年頃の182万人と比べると30年足らずでほぼ半減と言えます。この流れが止まることは予想されづらく、今後も更に減るでしょう。

大学の場合

 大学への進学率は1992年時点の26%程度から53%程度まで上がっているため、大学に限って見ると購買者のパイ自体は47万人→56万人とむしろ増加しています。しかし、大学進学率は2009年に50%を超えてから成長率は鈍化しており、上げ止まりの様子も見せつつあります。そのため、今後は人口減少の影響が顕著に出てくると思われます。

 また、定数管理の厳格化、学費が高いことへの指摘、日本全体の所得が上向かないことなどから、従来のビジネスモデルでは厳しくならざるを得ません。

 

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大学以外の学校の場合

 一方で、大学以外の学校は人口減の影響を大きく受けています。その中で一番厳しい環境にあると言えるのは、短大/専門学校でしょう。一次は13%程度あった進学率は、現在では4.6%と1/3まで低下。1992年には22万人居たパイも4.8万人と1/5程度まで低下しており、非常に厳しい状況にあるといえます。

 

まとめると:

大学は「これから悪化に転じると思われるのに、現状大きな問題が無かったので危機意識があまりないのが懸念」

短大や専門学校は「人口減・忌避傾向があり、現在既にかなり厳しい」

(幼)小中高は「既に徐々に厳しくなってきており、今後も厳しさは継続予想」

 

ポジティブな材料

 一方で、人生百年時代・大人の学びなおしへの興味・ニーズの高まりにより、リカレント教育に活路を見出す学校法人も増えつつあります。こちらについては年齢問わずターゲットを増やすことができることから、新しい市場としての期待値は高いでしょう。しかし、こちらについても注意が必要です。なぜなら、リカレント教育として注目されているのは「語学」「IT」「介護/健康/福祉」が主であり、比較的資格色が強いものだからです。そのため、リカレント教育需要を取りに行く際の学校法人のライバルは「資格」といえるかもしれません。 また、次点としては経営学や心理学といったものが控えていますが、特定のジャンルに偏っているため、既に取り組みを進めている学校法人にキャッチアップするためには非常に労力が必要となるでしょう。

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1-2.市場内競争の動向

 学校法人間の競争は、今後激化すると予想されます。競争激化する市場の特徴に「市場成長率が低い状況」「競合他社が多数存在する」「数十%以上のシェアを持つような圧倒的な企業が存在しない」というものがありますが、まさにこれらに該当するからです。市場内のプレイヤーは比較的多い状況で、学生/生徒数が伸びづらいことから、学生/生徒の獲得競争は激化するでしょう。 これらについて、各校少しずつ工夫を凝らして独自色を出そうとしていますが、資格の取得支援・人間力を育てる などの表現の法人が多く、類似してしまっているといえます。

 ※資格取得や人間力向上そのものについて否定する意図はありませんが、顧客(学生や保護者など)目線で見た際に、差異が判りづらく、貴学選択の意思決定に寄与しづらいという点が課題といえます。

1-3.供給者の脅威

 学校法人における供給者は、設備供給業者・教材の供給業者や教職員があげられます。GIGAスクール構想への対応、英語教育・アクティブラーニングなど時代の変化に対応するためのコスト増は避けられません。また、多くの学校法人が固唾をのんで見守っているのが教員の残業代に関する訴訟ではないでしょうか。 私立学校法人の多くが、給特法を参考とした「基本給の数%をみなし残業代として支払う」という運用をしていますが、判決の結果この運用が認められないとなると、大幅な人件費増が予想されます。

 そうなってくると、サービスの取捨選択(例えば部活や補講を減らす)や、生産性向上施策(教員の主業務ではなく付随業務を可能な限り削減/省力化する等)が求められます。

 

1-4.新規参入者の動向

 学校法人の業界に新規で参入してくる企業はあまり多くありません。上記の通り経営環境が非常に厳しいためです。しかし、大学が主であった学校法人が小中高を付属校として開校したり、中高一貫校が小学校を持ったり・・・と、学校業界全体でみると新規参入は少なくとも、「高等学校業界」「中学校業界」などに限定してみると新規参入はまだ存在するといえます。

 

1-5.代替品の動向

 学校法人の代替品はあまり存在しません。学習塾は小中高の補講の補完的役割を果たすため、その点に限って言えば代替材であるともいえますが、完全に置き換わるということはあまりないでしょう。大学についても、一部の先鋭的な人がどれだけ学士/修士の意義を否定したとしても、進学率が下がるということはあまり考えられません。
 しかし、留学生にとっては他国の大学が代替品として存在するでしょうし、リカレント教育においては資格ビジネスなどが代替品として挙げられる可能性があります。そのため、「既存ビジネスに限ってはあまり存在しない」が「その他の収益源を狙おうとすると代替品が存在する」と言えます。

 また、少し脱線しますが昨今はオンラインサロンや動画配信チャンネルなどが雨後の竹の子のように誕生していますが、これらに対しては侮る/脅えることなく認識する必要があると考えております。学校法人の目線で見ると、「アカデミックでないのに大学を語る悪しき者」と見えてしまいますが、「実務に即効性がある(と思わせる)」「有名人が自身で集客している」「発信者/参加者双方が共同で活性化している」「参加させやすい価格設定や提供場所」といった点については非常に素晴らしい取組を行なっているとも言えます。 しかし、逆に上記の点を学校法人がクリアすれば既存の資産で勝るため、ビジネスの勝機が見えてくると考えられます。

 

まとめるとこのような形になります。

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学校法人に求められる経営の方向性

 外部環境を踏まえて、経営の方向性はどのように変化するでしょうか?まず、学校法人の主な収益源から考えていきます。学校法人の収益源は主に学納金・補助金・寄付金・その他からなります。

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学納金

 学納金については、現状多くの学校法人で過半を占めている、非常に重視すべき項目ですが、少子高齢化・定員管理の厳格化などによって、増収は難しいと考えられます。しかし、リカレント教育や留学生獲得に活路があるかもしれません。双方を実現するためのポイントは、学校としての魅力を高め・知らしめていくこと(広報)であると言えるでしょう。

補助金

 政府などからの補助金については、ウエイト自体は高くないものの、経営上は重要な存在と位置付けられている学校法人が多いでしょう。増加させるべきであるという世論はある一方で、国家財政も余裕がない状態であり、継続的な増加は見込めません。(総額は現状と変わりがなくとも、いわゆる上位校への重点杯分はあり得る)

 また、こちらは昨今の外部環境変化によるものではありませんが、補助金支給要件(定員充足率など)から逸脱してしまうと補助金がカットされてしまうという点についてもケアが必要です。そのため、日々進捗状況を把握しながら、着実に支給要件内に落とすため業務コントロールが必要になってくるでしょう。

寄付金

 寄付金については、現状欧米と比べると日本は全体的に意識が低いとされており、実際金額もかなり見劣りします。そのため、伸びしろは大きいと言えます。寄付があまり活発ではない理由の仮説として、寄付の意義が浸透していないこと・そもそも学校法人に対して寄付をするという発想が浸透していないことが挙げられます。そのため、卒業生や財界等に対して働きかけを行っていくことが求められます。

その他収益

 その他の収益については、学校法人毎にことなります。しかし、一般的にはここで大きな収益を埋めている学校はあまり多くないのが実態です。(附属病院を持つ学校法人はかなり大きくなる一方、特に文系寄りの学校法人では殆ど無いと言っても良い水準)

 そのため、一部学校法人では事業収入の増加を企図する流れも見られており、今後に期待をすることが出来るでしょう。その他の収益を拡大するためのポイントとして、市場のニーズを的確に捉えること・自学の保有する資源(特に知財)をどのように結びつけ、マネタイズするかと言うことが挙げられそうです。

 しかし、そのためには事業検討・事業開発や管理など、所謂一般企業でも求められる能力が必要となります。業績に対して拘りを持ってマネタイズし切ることの出来る人材というのは、学校法人の中ではあまり居ないのが現実ではないでしょうか。(そもそも利益追求したいと考えている人が入ってこず、そのような育成もされないため)

 

方向性をまとめると

このように見ていくと、収益を拡大していくためのポイントは大きく3つとなります。

①時代の変化を機敏に捉え企画し、実行する能力

②対外的に自学の魅力をアピールしていく広報能力

③教育品質の維持と向上

一方で、経費については割とシンプルで、

①全学目線で要否を考え筋肉質な体制を作る

②既存業務をより改善して「学生/生徒から選ばれない理由を無くす」

このように、成長戦略に加えて財政健全化を進めていくことがこれからの教職員に求められると考えられます。

 

 

本件については、多数の方にご参加頂いたことから、追加での開催を検討しております。

2020年12月21日 14時からとなります。

SVやAM一人当たりの受け持ち店舗数は何件が妥当?

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 飲食店や小売業など、一つの店舗での売上に上限のあるような業態の場合、店舗数を増やすことが求められます。そこで一般的になるのがSV(スーパーバイザー)、AM(エリアマネジャー)等の設定です。企業によってそれぞれの呼ばれ方は異なりますが、直接目が届かない店舗に対して、個別店舗の経営の監督やコンサルティング、事業の支援や本社企画の販促ツールの配送といったことを目的に設定される役割ですが、その役割自体が利益を生むわけではないので、人数を多くし過ぎないことも求められます。
 では、SVやAM1人が受け持つ店舗数を決定する為の根拠はあるのでしょうか?

 

一般的な担当数は7-8件

 一般的な担当数は一人当たり7-8件程度と考えられます。(業態・個社事情により差異あり。後述)これは、各店舗に週1で訪問し店舗に訪問後2-3時間の業務を行う・本社⇔店舗間の移動時間が1時間程度であるという前提で計算されています。店舗での業務時間が2.5時間/件×7件で週18時間、移動が同様に15-20時間、本社での作業時間に10-20時間を確保するという計算です。これがベースとなります。

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一人当たりの店舗数を減らすべきとき

 以下に該当する時は、SVによるきめ細かな対応が必要になるため、受け持つ店舗数を減らすことが求められるでしょう。

①店舗運営ルールや製品が複雑 

 店舗運営上独特のルールを持っている(特に高級店など)場合や、新しい製品が沢山出たり、製品特徴を理解するのに時間を要したり、法的な制約を考慮する必要があったり、というような場合、一人当たりの店舗数は少なくすることが求められます。SV自身が学習する時間を長くする必要があったり、店舗での滞在時間を長くする必要が出てきたりするからです。

②業務システムが整備されていない 

 発注情報管理や、個別店舗の経営状況を管理するための方法やシステム導入が未整備な場合、経営管理に時間を要するため、店舗でのSVの滞在時間を長めに見積もることが必要となります。


③店長の管理能力が高くない 

 個別店を任される店長の経営管理能力が高くない場合、SVが丁寧に指導を行う必要が出てくる為、店舗でのSVの滞在時間を長めに見積もることが必要となります。(一般的なSV以外に、新規出店者のフォローのための専属の担当者を置いているケースも見られます)
④店舗間の物理的な距離が離れている。
 地方拠点でよく見られますが、店舗間の距離が離れすぎているために、SVが回ろうにも物理的に無理だということはよくあります。その場合はSVの増加が求められます。

 

一人当たりの店舗数を増やすべきとき

 以下に該当する時は、SV一人で沢山の店舗を見るよう求められます。


①店舗の粗利水準が低いとき

 基本的にSVは販管費的な存在となる為、店舗の粗利水準が低い場合SVを増やすことは難しくなるでしょう。
 ※フランチャイズビジネスの場合で店舗から得るフィーが少ない場合などもこれに当たります。


②SV一人当たりの人件費が高いとき 

 様々な事情で、SV自身の人件費が高くなってしまっている企業があります。この場合も、一人で多くの店舗を担当させなければ収支が合わないため、多くの店舗を担当して貰う必要があります。

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 このような観点で、自社の管理状況を確認してみてはいかがでしょうか。意外な気づきがあるかもしれませんよ。

即効性ある戦略人事でウィズコロナ時代を乗り越えろ

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 新型コロナウイルスによって企業は大きな被害を受け、また、変革を余儀なくされています。
約2 カ月にわたる緊急事態宣言及び外出などの自粛要請で一旦は収束へ向かいつつありましたが、自粛解除後の社会の動きから、いつまた感染第2 波・第3 波が来るか予断を許さない状況にあります。そこで本稿では、以下の事項について解説していきたいと思います。

● コロナ禍によって引き起こされた企業内の混乱と、一般的な対応の紹介
● コロナ禍の対応を継続することによって想定される将来予測
● コロナ禍を契機に、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に発展を遂げるため人事が取るべき施策と指針の作成方法

 

人事が直面した4つの大きな混乱

①リモートワークによるマネジメントの混乱

 三密を避ける為、多くの企業でリモートワークの導入を余儀なくされました。リモートワークは、感染抑止に大いに役立つほか、通勤時間の削減や家庭事情への対応を可能とするメリットがあります。
 一方、管理職からは「部下がさぼらないか」「生産性が低下するのでは」といった不安の声が出ています。一般社員からは「業務指示がわかりにくく質問もしづらい」「上司はきちんと見てくれているのか」「デスクトップ監視ツールが導入され、過干渉の傾向がある」といった不満の声も出ています。

②業務手法の変更による混乱

 給与計算や会計処理のシステムに社外からアクセスできず交代での出社が余儀なくされる、従来のリード獲得手段であった飛び込み営業やセミナー開催ができなくなるなど、既存の業務手法を変える必要性が生じています。しかし、新たな業務手法を検討、設計でき
る人材は多くいないため、従業員の能力面や意欲面に課題が生じています。


③ 新卒研修の中止や延期

 集合研修の手法と時期の混乱集合での研修を見送る向きが多く見られます。2020年度新入社員への入社式や入社後研修の中止の影響は大きく、学生から社会
人への意識改革、ビジネスマナーの習得、自社ビジネスや組織の知識獲得に遅れが生じています。


④採用手法と母集団形成に関する混乱

 採用では、企業セミナーや合同企業説明会、面接を見送る動きが多く見られ、採用の母集団形成が難しくなっています。
 現状の①〜④の混乱だけではなく、今後は次項のような問題も生じると予想されます。

 

今後、企業が直面すると予想される数々の問題

●成果を出さないのに厚遇を得る人の顕在化

 「リモートワークに移行すると思うように成果が出せない従業員が明らかになった」という話が聞こえてきます。単に能力不足だけでなく、働いているふりをしているベテランの存在が明らかになった企業もあります。
 そういった企業において、曖昧な基準で評価実施と評価報酬が連動しない、つまり、社歴給や年齢給のように、評価にかかわらず一定額の昇給をするなどの制度が残る企業は、従業員の意欲低下につながる恐れがあります。


●コミュニケーションスキルの変化と配慮

 今後、リモートワークが一般化すると、同一事業所で顔を合わせて働く機会は減少します。それでも一緒に働いてきたメンバー間ならば、あうんの呼吸で対応できます。しかし、新しいメンバーが組織に馴染むには特別な努力や配慮が必要になります。そのため、コミュニケーションスタイルが変化することが予想されます。


●ITリテラシーの向上とリモートワーク環境の設定

 リモートワーク対応のため既存の業務システムからの切り替えが求められると予想されます。クライアントからの要請もあるかもしれません。
 例えば、オープンクラウド(複数のIT企業がジョイントすることで、有益なクラウドサービスを提供し活用できる形態)への移行などです。 また中小企業では、システム構築や環境の異なる従業員のPC環境を再設定するなどの対応は難しいでしょう。そのため、従業員個人がITリテラシーを持つことが求められます。
 さらに、間接部門の業務には、オフィスの環境整備や賃料管理業務に加えて、在宅勤務充実のための手当の充実や情報提供などが求められます。


●集合研修での能力開発の制限

 今後は、受講者全員が同一の時期と場所に集合する研修の実施は行いにくくなる一方で、ITリテラシーや変化したコミュニケーションスキル、業務遂行手法の変更など、新たな能力開発ニーズは高まると予想されます。


● 短期的な採用環境の改善と中長期的な売り手市場への揺り戻し

 採用者数を限定する企業が複数出ることが予想され、採用難易度は低下するでしょう。しかし、人口減少傾向は変わりません。そのため、数年後からは採用難になると予想されます。採用難度が変わることによって、入社者の質と量の変化に悩まされる企業は増えるでしょう。


●非金銭報酬の提供が難しくなる

 多くの企業が親睦会や社内運動会などの社内イベント、定期的な飲み会、全社集会での報奨などを行っています。しかし、それらのイベント開催が難しくなることが予想されます。


● 企業へのロイヤリティ低下で離職増加の可能性

 親睦会や社内イベントが減少することで社員が顔を合わせる機会が低下します。それにともなって企業風土の構築や愛社精神の低下が予想されます。
 また、リモートワークの環境充実に投資している企業や、先進的な取り組みを行っている企業に関心が集まり、変われない企業では離職が増える可能性があります。


●第2波・第3波到来への備え

 本稿の編集は7月上旬に行っていますが、感染拡大低下から一転東京都を中心に感染者数は増加傾向にあり予断を許しません。
 また、在住、在勤エリアで拡大はしなくても万が一ピンポイントで自社において感染者が確認されたり、第2波・第3波が到来したりした場合、中小企業であれば大きな影響を受けます。当然、リモートワークに移行することが求められます。
 ここまでのまとめを図1に示しましたので再度確認してください。

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●コロナ禍の対応について

 コロナ禍に対する、・「一般的な対応」と「継続したときの副作用」・「抜本的な対応」と「副次的なメリット」を、図2・3にまとめたので確認してください。

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抜本対応の実行に向けた人事施策の注意点

●人事施策のドーナツ化現象

 新型コロナウイルスの影響の有無にかかわらず「等級・報酬・評価・育成・採用・退職」はそれぞれ課題を持っています。これに対して、企業内の各担当と外部ブレインが協力し、個別に対応することで解決します。

例えば、等級・報酬・評価は人事制度の運用担当チーム、あるいは一般的な組織や人事コンサルタントが対応します。また、育成は教育担当チームあるいは研修会社が対応します。採用は採用チームあるいは採用コンサルタント、退職は労務チームや退職金制度構築コンサルタント、社労士などがそれに該当します。
 個別対応は速度を生む一方、全体の整合性確保が次第に難しくなり、時として相反する意思決定をしてしまうことがあります。これを「人事施策のドーナツ化現象」と言います。

●採用した人材が現場で活躍できない

 現在、採用チームに任せて、彼らが考える「良い人を○人」を、ブランド校や現在の従業員の卒業校、馴染みのある学校に対して集中的に採用活動を行い、上から順に内定を出していたとします。
 確かにこの方法は効率的ですが、リモートワーク進捗により求める人物像に変化が生じ、入社後に上手く活躍できない、考えが合わないなどの理由で離職者が多くなってしまう懸念があります。

●年功制を排した制度で起きる

 年功給の発生コロナ対策の結果「頑張った人に報いたい」という方針の下、評価制度を変更しても、育成が伴わなければ評価制度は充分な効果を発揮しません。
 例えば、現場では「D最低評価だと昇給無しでかわいそうだから、D評価は付けない」「S最高評価は周りとの差が付き過ぎるから避けたい。よってSとDを減らしA〜Cに収斂させる」といったような運用が行われ、実質年齢給が継続している企業が多く存在します。


●昇格に必要な能力を身に付ける研修がない

 マネジメントができるようになって欲しいと考え、管理能力が向上すれば報酬を上げるような等級・評価制度を設計している企業は比較的多く存在します。そのために考課者研修やリーダーシップ研修も多くありますが、集合研修が難しくなると、その能力開発が難しくなる可能性があります。
 結果として、奇跡的に成長を遂げる人が出てくることを願うか、実態にそぐわない人を無理矢理昇格させるなどのねじれが生じる可能性があります。


人事戦略の策定で期待できるメリット

 人事施策のドーナツ化現象を解消するために、人事施策に一貫性を持たせると以下のようなメリットが生まれます。


●経営層にとって

 経営戦略の実現のために必要となる人的生産性の向上を実現することができます。

●現場管理者にとって

 事業部戦略や機能戦略の実現が可能となり、また、人事制度や運用の軸が明確となるため、人事の理解が容易になるとともに活用が容易になります。

 

●従業員にとって

 入社後のモチベーション向上及びスキルアップの指針となり、また、入社や退職の意思決定要素としても活用でき、ミスマッチなどによる離職低減やぶら下がりリスクを回避しやすくなります。

 

●人事部にとって

 無数に考えられる施策を選択する根拠として活用できます。よって、成果向上にもつながります。

 

PDFは以下よりご覧ください。

drive.google.com

 

人事戦略の立案や、人事制度との一体改革のお問い合わせは以下からお気軽にお問い合わせください。「山本のブログを見て~」と仰っていただけるとスムーズです

http://www.sele-vari.co.jp/

採用に繋がる労働基準法hacks

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最近そこらの道を散歩しているときに出くわした、とある政党のポスター。

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「8時間働けばふつうに暮らせる社会へ」

確かに理想的ですね・・・?でも、この画像では9時~17時で働くイメージになっている模様。しかし、この広告には少し問題があります。

 

労働基準法 第34条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。 

  これによって、労働時間が8時間以上の場合は1時間休憩を取らせなければなりません。 そのため、8時間働けば9時間の拘束が必要になるわけです。
そのため、9時~18時か、8時~17時で描く必要があります。

 

 と、まあこういうツッコミはさておき、法に則ると「9時~18時」とせざるを得ませんが、労働力不足で売り手市場になりがちな昨今です。少しでも労働条件を良さそうに見せて、採用力を高めたい経営者の方もいらっしゃるかと思います。
そこで、労働時間に関する裏技?を使うことで他社に抜きん出ていきましょう。


裏ヒント:少しだけ定時を短く見せ、かつサービス残業を促す

 8時間働かせると1時間休憩になりますが、6時間以上8時間未満の場合は休憩時間は45分で済みます。そのため、

所定労働時間を7時間55分にすることで休憩時間は45分で済む

という技を発動することが出来ます。これで、20分ほど退勤時間を短くすることが出来ます。

定時:9時~18時 
  → 9時~17時40分 

  僅かなことですが、非常に短そうに見えます。これは300円のお菓子が298円になっていると凄く安くなっているように感じる端数価格戦略の人事版とも言えます。

 

 ただし、ここで注意するべきことは、「定時は8時間未満なので休憩は55分で良いが、8時間を超えた場合は、やっぱり休憩時間を1時間取らせる必要がある」ということです。既に7時間55分働かせてしまっていますので、少しでも残業させると休憩時間不足=労基法違反 になってしまいます。
 そこで「残業前に15分の休憩時間を設定する」という対応が必要になります。したがって、残業開始時間は17時55分~ となります。

 なんだ、結局見た目だけの問題じゃん、という声も聞こえますが、実際は違います。

 こういう「残業前の15分休憩」はだいたいみんなが無視して働くので、サービス残業が手に入ってしまうわけです。


表ヒント手帖:従業員の個別事情に対応する

 法の盲点をこういう悪い方法で使うかどうかはさておき、この考え方には別の使い方もあります。
 それは「時短勤務の人の事情に配慮する」ことです。8時間ではなく6時間勤務を希望する方は多くいらっしゃいますが、多くの企業では休憩時間をフルタイムの人と合わせて1時間取らせているがために9時~16時で拘束しているケースが多いようです。

 しかし、そもそも8時間未満の場合は45分で良いため、9時~15時45分の拘束に変えることが可能となります。

 

 また、こちらも労働時間を5時間55分に変えてあげれば、そもそも休憩時間の設定自体が不要となる為、9時~14時55分に短縮が可能となります。ここまで短縮できれば、育児中の女性や副業希望者の採用も進められそうです。

 


*「表ヒント手帖」の手法は休憩時間の一斉付与の原則(全員同時に取らせなければならない)に抵触するため、労働組合または従業員過半数の代表との合意が必要になります
*本件に関しては、各社調査の上ご対応ください。

人事戦略に必須の5つの要素、3つの制約要件

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 「戦略人事」に関する本が増えてきましたが、皆さんの企業では人事戦略を立てられているでしょうか?経営戦略については、「コストリーダーシップ戦略」とか「差別化戦略」といったように、定石のようなものが作りあげられ、展開されています。しかし、こと人事戦略に限っては、まだそのような定番といわれるような戦略はあまり作られていません。
 そのため、本項では人事戦略の定義・含めておくべき要素について紹介します。

1.人事戦略の定義と目指すべきゴール

 「人事戦略を立てたい」と考えている多くの企業では、明文化されているにせよされていないにせよ、企業のあるべき姿に対して、現状のギャップがあると考えているはずです。企業のあるべき姿は、財務ならば自己資本比率N%以上、マーケティングならば毎年N件以上の引合い獲得、生産なら月N個生産かつ不良品率M%以下・・・と言ったような形となります。しかし、人材のあるべき姿に関しては、数値化することが難しいばかりか、定性的な状態でさえ把握するのは難しいでしょう。


 人材のあるべき姿を定義しようとすると、人によって様々な価値観があり、非常に困難な作業になります。組織は「共通の目標を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステムのこと」であるというバーナードの定義に従って考えるならば、組織目標の達成が人事戦略のゴールと言えます。

つまり、

組織目標を達成できるだけの組織パフォーマンスを出すことが人事戦略のゴールであり、

人事戦略はあるべき組織のパフォーマンスに近づける為の施策をまとめたものであると言えます。

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組織のパフォーマンスを分解する

 組織のパフォーマンスを出す、と一口に言っても、まだ問題が大きすぎて考えるのには適していません。そのため、問題をもう少し切り分けてみましょう。組織のパフォーマンスは、所属している個々人のパフォーマンスの合計値と言えます。組織に所属している人たちそれぞれが成果を出すことで組織のパフォーマンスとなるわけです。

 そのため、ざっくり言うと個人のパフォーマンス×組織に所属している人数が組織のパフォーマンスとなります。が、実際の組織はそうはなりません。業務が重複してしまって効率が落ちてしまっていたり、逆にチームの連携が非常に良く取れていて効率があがったり、ということがおきます。 

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なので、組織効率についても考える必要がある訳です。つまり組織のパフォーマンスは個人のパフォーマンス×組織化による影響(組織の人数×組織効率)であるということがいえます。

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 次に、個人のパフォーマンスを分解してみましょう。個人のパフォーマンスの話をすると、個人が持っている業務を遂行するのに関連する能力に意識が向きがちになります。能力は確かに非常に重要な要素の一つです。しかし、人間は能力さえあれば成果が出せるわけではありません。能力があっても、モチベーションがなければ成果を出すことは出来ません。また、能力発揮の機会を与えられていなければ成果は出ないでしょう。 そのため、個人のパフォーマンスは以下の式で表すことが出来ます。

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これまでの内容をまとめると組織のパフォーマンスは以下の様に分解できると言えます。

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 ここで注意しておくべきことは、それぞれが足し算ではなくかけ算で表されているという点です。能力が0の人は、幾ら意欲や機会に恵まれていても成果を出すことは出来ないでしょう。同じように、どれだけ能力に溢れる人でも、意欲がなかったり、機会に恵まれなければ成果を出すことは出来ないでしょう。人数や組織効率についても同様と言えます。これら5個の要素はどれが欠けても成果に繋がらないわけです。(実際0以下の人はほぼ居ないとは思われますが)

 このように、課題を細分化して考えることは、一見回り道のように見えますが、打ち手を効果的にするのには非常に有効となります。「組織のパフォーマンスが目標とするものに対して低いから改善したい」と考えて、研修を行ったり、報奨金を追加したりしても、それが効果的な打ち手に繋がらないかも知れないからです。
 研修は能力向上に有効であることが多い施策ではありますが、求める組織のパフォーマンスを満たすべき能力は既に持っていて、意欲が足りない可能性もあるわけです。あるいは、個人のパフォーマンス向上ではなく、人員の増加が必要となる可能性もあります。 同様に、意欲向上の為に報奨金をたくさん支払っても、能力が足りない可能性があります。
 このように、現在の組織のパフォーマンスを最終的に目指したい組織のパフォーマンスに向けて変革していくためには、能力×モチベーション×能力発揮機会×組織の人数×組織効率に分けた上で、それぞれ現在の状態から、あるべき状態に向けてこれら5つの要素をどう変えていくのか・そして最終的には組織としてのパフォーマンスをどうやって高めていくのかということを考えるのが人事戦略(成果向上戦略)といえます。

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2.制約要件

 人事戦略の目的は組織のパフォーマンス向上にあります。しかし、多くの戦略がそうであるように、人事戦略にも制約要件となるべきものが存在します。 それは、①他の戦略との対応 ②法対応 ③経済環境や社会的志向の変化への対応 となります。

①他の戦略との対応

 最も大きい要素は財務戦略(ストレートに言うと人件費予算)による制約です。予算が無限にあれば採用も・育成も・意欲向上も可能となります。しかし、現実的にはそのような企業は存在しません。また、ビジネスモデルによる制約(一人一ヶ月当たりが出せる利益額以上の給与は支給出来ない)や、業務プロセスによる制約(対面で顧客と接しなければならない企業であればリモートワーク施策をとれない)といったものが考えられます。

②法対応

 最低賃金や解雇規制、有期雇用契約の上限年数や、同一労働同一賃金の対応といった最低限守らなければならないものは、戦略の大きな制約要件となります。

③経済環境や社会的志向の変化への対応

 法対応以外の個人の希望への対応についても検討が必要です。時間的な制約や(短時間勤務がしたい・柔軟な勤務時間を希望する)地理的な制約(出勤の可否・転勤の可否)、採用難易度や雇用の流動性、個人のキャリア志向をどこまで考えるかといったことが該当します。

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 「パフォーマンスの向上」が会社が従業員に対して求めていることであるのに対して、「制約要件への対応」は従業員や社会が会社に対して求めることへの対応であると言えます。
 会社の都合と個人や社会の都合とを合わせて考えていく必要があるというわけです。例えば、会社としては

・モチベーション上げて欲しいけれども
・財務的な制約で人件費は上げられない
・一方でいくらでも下げられるかと言うと最低賃金の制約があってある程度までしか下げることができない
・従業員は個人のキャリアをいろんな形で切り開いていきたい

こうしたそれぞれのニーズを統合して解決する方法を人事戦略で実現していく必要があるというわけです。

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3.人事戦略を立てることのメリット

最後に、人事戦略の活用イメージについて。戦略は、企業の各ステークホルダーにとって以下の様な効果を発揮します。

1.経営層にとって

経営戦略の実現の為に必要となる人的生産性の向上を実現することが出来る。

2.現場管理者にとって

 事業部戦略や機能戦略の実現が可能となる。また、人事制度や運用の軸が明確となる為、人事の理解が容易になるとともに、活用が容易となる。

3.従業員にとって

入社後のモチベーション向上及びスキルアップの指針となる。また、入社・退職の意思決定要素としても活用出来、ミスマッチ等による離職低減・ぶら下がりリスクを回避しやすくなる。

4.人事部にとって

無数に考えられる施策を選択する根拠として活用出来る。そのため、成果向上に繋がる。

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今日のまとめ

・人事戦略は組織のパフォーマンスをあるべき姿に近づける為に、従業員の能力、モチベーション、能力発揮機会及び、組織の人数、組織効率に対して働きかけるもの
・ただし、他戦略・法律・従業員の希望といった制約条件を考慮しておく必要がある

 

人事戦略の立案や、人事制度との一体改革のお問い合わせは以下からお気軽にお問い合わせください。「山本のブログを見て~」と仰っていただけるとスムーズです

http://www.sele-vari.co.jp/

 

 

参考

個人の成果は:本人の能力×モチベーション×能力発揮の機会 のかけ算。
LepakによるAMO理論(パフォーマンスは𝒇(𝑨𝒃𝒊𝒍𝒊𝒕𝒚 , 𝑴𝒐𝒕𝒊𝒗𝒂𝒕𝒊𝒐𝒏 , 𝑶𝒑𝒑𝒐𝒓𝒕𝒖𝒏𝒊𝒕𝒊𝒆𝒔) の関数で算出できる)を元に作成。
・やる気や機会がどれだけあっても能力が無ければ駄目。
・能力や機会があってもモチベーションが無ければ駄目。
・能力やモチベーションがあっても、それを活かす機会が無ければ駄目。

組織の成果は:個人の成果 × 人数 × 組織効率 のかけ算。
こちらについては、組織論のスターモデル及びマクシミリアン・リンゲルマンの社会的手抜き実験等を元に作成。
・如何に優れた人が居ても、1名だけであれば組織としての成果は変わらず(人数が必要)
・人数がどれだけいても、組織効率が低ければ意味が無い

2020/03/13 セミナー実施 「世間が人手不足でも!! 優秀な人材を確保できる人事の仕組みと仕掛け」@大阪商工会議所西支部

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「世間が人手不足でも!! 優秀な人材を確保できる人事の仕組みと仕掛け」

と題して、セミナーを行ないました。

 

経営資源が限られる中小企業だからこそ、優秀な人財の確保が必要です。しかし、採用に一苦労し、やっと採用した社員は働き盛りになった頃に辞めてしまう・・・。様々な企業で人手不足が叫ばれる中、自社で活躍してくれそうな人材をいかに集め、いかに活躍して貰うか?ということがテーマです。

昨年に開催させて頂いた内容のリピート開催であり、かつコロナウイルス問題がある中で参加者は少なめでしたが、不要不急の外出は控えるようにと言われている中来てくれてる方々だったため、意欲は高めといった印象でした。

 

日時

2020年3月13日(金)
午後2時00分~4時00分

 

場所

大阪トヨペットビル 9階 会議室D
大阪市西区立売堀3丁目1-1

 

アジェンダ

1.「健康優良な日本人の中年男性」だけが活躍している会社は危ない
2.「高い給与を与えれば社員は満足する」の嘘
3.「真面目に頑張れ」の何がいけないのか
4.「増収増益」なのにジリ貧になる?

 

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マスク付けて2時間喋ると軽く酸欠になっているのか、頭がクラクラしてしまいますね。

早く沈静化してほしいものです。

 

人事制度運用担当に必要な9つの行動・能力・考え方

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 人事制度運用担当者に必要となる要素を9つにまとめました。あなたが経営層であれば人事制度運用担当者を任命するときに、あなたが人事制度担当者であれば自身のキャリアアップの指針として活用ください。

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2019年の仕事を納めました。

2019年仕事納めました。今年は超疲れた一年でした。その分、私生活も仕事も充実した印象。

 

まず私生活。

 殆ど奥さんがやってくれたとはいえ、子供産まれて一緒に暮らすのはかーなり体力勝負。判らないことばかり。子供にとっては人生初体験のことばかりなんでしょうが、こちらとしても親初体験なことばかり。

 あとは大きな買い物をしたりもしました。


次に仕事。

 おかげさまで沢山の引き合いを貰った結果、春以降めっちゃくちゃ忙しくなりまして、数えてみたら出張70回・セミナー登壇9回・研修登壇10回。11月以降は疲れが限界に来てしまって、金曜日の夜なんかは帰宅後動けない、みたいなことも何回か。

 

ただ、精神的にはかなり充実していた感覚。メンタルヘルス的には、家族が増えるとか大きい買い物するとか、責任の重い仕事をするとかみたいなポジティブなことでも大きいストレッサー(ストレス源)になるらしいんだけども、事業会社に居たときのように、上司に守ってもらって決められた範囲内でだけやってたら良いって状況の時より遥かに前向きな精神状態でいられたかなと。(弊社がほったらかしというわけでは無いですが、それでも一般企業よりは裁量が大きい分責任も大きい)

 

辛いことも辛くないことも全部自分の責任や成長の糧やと思えてるのが主要因かもなと。

ストレスを自身の成長の糧と考えられているなら、大きなストレスも健康には悪影響を与えない

という調査結果もあるらしいので、その精神で行きたいなと思います。

 

年末年始はゆっくり反省して、来年はもっと良い年にしよう。

スライムぴぴぴ (0・1・2さいの絵本)

 

 

ファクトフルネス分析 データと事実から自社賃金を知る

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近代中小企業 2019.08月号

ファクトフルネス分析 データと事実から自社賃金を知る

 

 

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 最近採用に苦戦している・優秀な社員が離職する・意欲が低い…人事の悩みはつきません。しかし、思い込みで対策すると、解決しないばかりか人件費が高騰するなど別の問題が起きることがあります。そこで本項では、Excel初心者でも定量的に分析できるよう、細かなステップに分けて丁寧に解説します。

 

1.賃金カーブで判ること

 例えば、こんな経験をされたことはありませんか? 採用面接の候補者から「御社のモデル年収はどれぐらいですか?」と質問された。自社の従業員から「うちの会社は、年功序列で給与が決まることに耐えられないので退職します。」と告げられた。労働組合から「同業他社より給与が低い気がするので、処遇改善をして頂きたいのですが。」と要求された。
 経営層あるいは人事担当の皆さんは、自社の給与がどう決まっていて、年功程度はどれぐらいか、他社と比べてどの程度高いのか・低いのかの問いに答えることが出来るでしょうか?もし、これに答えられないとすると、採用で他社に遅れを取ってしまうかもしれません。あるいは、なんとなくの思い込みで給与を上げすぎて人件費がかさんでしまったりすることに繋がるかもしれません。
 そこで有効なのが、賃金カーブを使った分析です。賃金カーブとは、自社の従業員の給与が生涯にわたってどのように変化していくのかを表したグラフです。具体的には以下のようなイメージで、縦軸に賃金(年収でも月収でもかまいません)、ヨコ軸に年齢を取ることが一般的です。

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 賃金カーブを使った分析からは、主に以下の5つを確認することが出来ます。①自社の年功序列具合②制度設計時の想定と実際の運用の乖離③同業他社・他業種との給与水準の乖離④労使交渉の昇給原資・⑤生涯年収です。
 本項では、まず「賃金カーブの作り方」をご説明し、「賃金カーブを使った分析」をご説明します。

 

2.自社の賃金カーブの作り方

 賃金カーブの作り方には2種類あります。経営陣や人事の考える「自社従業員が歩むモデル」のキャリアを元に作成する演繹法的な描き方と、現在の従業員の給与の状況から考える帰納法的な描き方です。(呼称は私が勝手に名付けただけなので覚えて頂く必要はありません)

 

演繹法賃金カーブの描き方

 演繹法的な描き方は、あくまでもルールやモデルをベースにした書き方です。自社従業員が歩むべき標準的な昇格パターンを元にしています。例えば、以下のようなイメージです。
 ・大卒。初任給の200,000円で入社
 ・3年(25歳)で等級2に昇格
 ・5年(30歳)で等級3に昇格
 ・3年(33歳)で主任に昇進
 ・2年(35歳)で等級4に昇格
 そして、等級毎の給与や役職手当が一意に決まっているのなら、以下のように描くことが出来ます。

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 また、昇格しなくても昇給する仕組みを取っている企業であれば、各年に昇給金額を加味していくことで、より現実味のある賃金カーブを描くことが出来ます。f:id:ryo_yamamoto:20200513225821p:plain

 さらに、評価毎に昇給金額が変わるのであれば、「評価は毎年B」ではなく現実的な評価パターンにすると納得感が増します。例えば、貴社がABCでの3段階評価を行なっているなら、より実感に近いのは

CBACBACBBA・・・と評価が交互に発生するよりは

CCCBBBBAAA・・・とする方がより実態に近くなります。 

昇格してすぐは評価が低く、後になれば上がっていく設定にするわけです。

 

演繹法賃金カーブのメリット

 帰納法的な書き方で記載した賃金カーブでは、現人事制度の原則に従えば、標準的な人がどの程度の給与になるのか、ということを考えるのに適しています。
 また、ハイパフォーマー・ローパフォーマーの設定も容易です。 ハイパフォーマーについては昇格年数を早く設定したり、評価をやや高くしたりすることで設計出来ます。逆に、ローパフォーマーについては逆に昇格を遅くしたり、どこかで打ち止めにしたり、評価をやや低く設定したりすればよいわけです。

 

演繹法賃金カーブのデメリット

 一方で、演繹法的な賃金カーブの問題点は「あくまでも架空のモデルに過ぎない」ということになります。そのため、モデルの設定の方法を誤ると全く現実味のない情報となってしまいます。

 

帰納法賃金カーブの描き方

 帰納法賃金カーブは、実際に今居る従業員の年齢と金額を元に散布図を作り、散布図の近似曲線を使って計算する方法です。近似曲線というと、難解な統計知識が必要になるかも知れない、と身構える方も多いかも知れませんが、Excelを使えば簡単に算出することができます。

 

1.まず、以下のように年齢と給与がわかるデータを用意します。

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2.散布図を使って以下のようにグラフを作成します。

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 【手順:年齢・月給のセルを選択した状態で、(上部メニュー)挿入→グラフから散布図を選択】

3.そして、散布図から近似曲線を作ります。 

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 【手順:グラフ上の散布図の任意の点をクリック→右クリック→近似曲線の追加→多項式近似を選択し、次数を2に設定。】

 

 ※このとき、多項式近似・2次関数にしておくことがポイントです。線形近似でもおおよそのことは判りますが、直線的な賃金カーブしか描くことが出来ません。そのため、極めて粗い分析しかできなくなります。(賃金カーブが指数・対数・累乗的なカーブを描くことはまずあり得ませんのでこちらもお勧め出来ません)

 

帰納法賃金カーブのメリット

 帰納法賃金カーブは、現実の賃金がどのように散らばっていて、どのような上がり方をしている人が多いのか、ということを考えるのに適しています。そのため、人事制度を理解・浸透していない多くの現場の人と会話をするときは、帰納法的な考え方によって作られた賃金カーブを元に話をした方が、共通認識を形成しやすくなります。

 

帰納法賃金カーブのデメリット

 一方で、帰納法的な賃金カーブの問題点は「今こうなっている」に過ぎず、理想的な状態であるとは限らない、ということになります。例えば、人事制度設計段階で想定していた給与と乖離が起きてしまっていたとしても、帰納法賃金カーブからだけでは判らないわけです。

 

3.賃金カーブ分析

 ここからは、前項で作成した賃金カーブを使って具体的に自社の特徴や課題を分析する方法をご説明します。

 

3-1.自社の年功序列具合

 帰納法賃金カーブの形から、自社の賃金がどの程度年功序列によって決定されているのか・昇給程度を把握することが出来ます。

 皆さんの企業の帰納法賃金カーブは以下のどのような形に近いでしょうか?

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①逓増型

 逓増型とは一定まで給与が抑えられている一方、ある程度の年齢から急速に上がる形のことを指します。歴史の長い日本企業で見られることが多いです。
*ただし、管理職以降の昇級幅が大きい昇給する場合など、年功序列でなくてもこの形を取ることがあります。

 

②直線型

 能力や職務にかかわらず一定の昇給を行い続けた場合や、毎年○千円昇給することとした場合にこの形となります。また、入社後全く昇給しない場合もこの型に含まれます。(真横の線になります)

 

③逓減型

 若手の間に一気に伸びてしまい、それからはあまり上昇しなくなるような場合、この形になります。スキルアップによる生産性向上に限界がある業種でもこのような形をとります。(仕事を覚えるまでは昇給余地があっても、一定以上は給与を上げられなくなるため)
 ただし、これは悪いことばかりではなく、若手登用を積極的に進めている企業や、年齢や勤続に関わらず給与を決めている企業でも見られます。

 

3-2.制度設計時の想定との乖離と外れ値の分析

 演繹法賃金カーブ(現在の人事制度を設計した際の給与カーブ)と、演繹法賃金カーブ(散布図から算出された給与カーブ)とを重ね合わせることで、自社の運用が制度の想定通りに行なわれているかを把握することができます。

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例えば、上記のようなパターンになったのであれば、「制度設計当初は逓増型昇給を企図していたが、実際の運用では逓減型となっている」ということが言えます。

 また、賃金カーブに対して大きく逸れている人が居る場合、個別に理由を確認することで離職防止策を検討することも可能です。

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 ※上記のような方が居た場合でも、業務遂行に問題で現在の給与が妥当なのであれば無理に処遇改善をする必要はありません。

 

3-3.同業他社・他業種との給与水準の乖離

 自社の賃金カーブに加え、厚生労働省が提供している賃金構造基本統計調査のデータを用いることで、同業他社や他業種と比べ、自社の給与が十分なのか・見劣りするのかを分析することが可能です。こちらのやり方も、今までのやり方と同様、自社の賃金カーブに賃金構造基本統計調査のデータを重ねることで分析することが可能となります。
 賃金構造基本統計調査は、業種・地域・企業規模毎のデータを取得することが出来ますので、必要に応じて使い分けると良いでしょう。
 

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 例えば上記のような形になった場合、入社直後は他社と給与が変わらないが、30歳前後から差が明確となっているということがわかります。このような状態を放置していると、入社から手塩に掛けて育成し、働き盛りになった頃に離職してしまう…という問題が発生してしまうわけです。

 

3-4.毎年の昇給額の参考資料

 賃金カーブを把握しておくことで、毎年の労使交渉の際、どれぐらい昇給させれば自社の給与カーブを維持することが出来るのかを定量的に把握することが可能です。
 演繹法賃金カーブであれば具体的な金額が既に出ていますが、帰納法賃金カーブから導く場合は、近似曲線を選択→右クリック→近似曲線の書式設定→数式を表示する を選択します。すると、グラフ上に2次関数の数式が表示されますので、そこから計算します。

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 例えば、上記の企業の場合、賃金カーブの数式はY=100.13X2-2866.2X+210822で表すことができます。
 この数式にあてはめると、25歳時点で200,489円、26歳時点では203,030円となりますので、25歳→26歳の間で2,541円昇給させれば現在の賃金カーブが維持出来るということが判ります。同様に計算し、各年代の人数と掛け合わせることで必要となる昇給原資総額を算出することが出来ます。

 

3-5.生涯年収

 賃金カーブから、自社従業員のおおよその生涯年収を算出することも可能です。賃金カーブの積分がそのまま想定生涯年収となるためです。表X-Xの企業で多項式近似値から導き出した各年齢の給与は以下のようになります。そこに、毎月の所定外労働時間と賞与を加味することでおおよその年収を計算することが出来ます。 これらを、入社年から定年まで合計することで自社における生涯年収が算出できます。

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※本表では所定外労働時間を20時間・賞与は4ヶ月・その他の支給は無しとして計算しています。

 

まとめ

 賃金カーブ分析では、自社の様々な問題点を明らかにすることが出来ます。今まで思い込みで「なんとなくこうだろう」と思われていたものでも、データで示すと思わぬ示唆を見つけることが出来るでしょう。
 しかし、人事課題の分析方法は賃金カーブ分析以外にも様々あります。例えば、将来の人員構成をシュミレーションしたり、従業員の方にインタビューをしたり、経営戦略と人事戦略の連動を確認したり、といったようなものです。ご興味のある方は是非弊社へご連絡ください。

 

 

PDFは以下よりご覧ください。

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本記事は近代中小企業様との契約に従い、公開期限が到来したため公開しているものです。