くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

即効性ある戦略人事でウィズコロナ時代を乗り越えろ

山本遼

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 新型コロナウイルスによって企業は大きな被害を受け、また、変革を余儀なくされています。
約2 カ月にわたる緊急事態宣言及び外出などの自粛要請で一旦は収束へ向かいつつありましたが、自粛解除後の社会の動きから、いつまた感染第2 波・第3 波が来るか予断を許さない状況にあります。そこで本稿では、以下の事項について解説していきたいと思います。

● コロナ禍によって引き起こされた企業内の混乱と、一般的な対応の紹介
● コロナ禍の対応を継続することによって想定される将来予測
● コロナ禍を契機に、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に発展を遂げるため人事が取るべき施策と指針の作成方法

 

人事が直面した4つの大きな混乱

①リモートワークによるマネジメントの混乱

 三密を避ける為、多くの企業でリモートワークの導入を余儀なくされました。リモートワークは、感染抑止に大いに役立つほか、通勤時間の削減や家庭事情への対応を可能とするメリットがあります。
 一方、管理職からは「部下がさぼらないか」「生産性が低下するのでは」といった不安の声が出ています。一般社員からは「業務指示がわかりにくく質問もしづらい」「上司はきちんと見てくれているのか」「デスクトップ監視ツールが導入され、過干渉の傾向がある」といった不満の声も出ています。

②業務手法の変更による混乱

 給与計算や会計処理のシステムに社外からアクセスできず交代での出社が余儀なくされる、従来のリード獲得手段であった飛び込み営業やセミナー開催ができなくなるなど、既存の業務手法を変える必要性が生じています。しかし、新たな業務手法を検討、設計でき
る人材は多くいないため、従業員の能力面や意欲面に課題が生じています。


③ 新卒研修の中止や延期

 集合研修の手法と時期の混乱集合での研修を見送る向きが多く見られます。2020年度新入社員への入社式や入社後研修の中止の影響は大きく、学生から社会
人への意識改革、ビジネスマナーの習得、自社ビジネスや組織の知識獲得に遅れが生じています。


④採用手法と母集団形成に関する混乱

 採用では、企業セミナーや合同企業説明会、面接を見送る動きが多く見られ、採用の母集団形成が難しくなっています。
 現状の①〜④の混乱だけではなく、今後は次項のような問題も生じると予想されます。

 

今後、企業が直面すると予想される数々の問題

●成果を出さないのに厚遇を得る人の顕在化

 「リモートワークに移行すると思うように成果が出せない従業員が明らかになった」という話が聞こえてきます。単に能力不足だけでなく、働いているふりをしているベテランの存在が明らかになった企業もあります。
 そういった企業において、曖昧な基準で評価実施と評価報酬が連動しない、つまり、社歴給や年齢給のように、評価にかかわらず一定額の昇給をするなどの制度が残る企業は、従業員の意欲低下につながる恐れがあります。


●コミュニケーションスキルの変化と配慮

 今後、リモートワークが一般化すると、同一事業所で顔を合わせて働く機会は減少します。それでも一緒に働いてきたメンバー間ならば、あうんの呼吸で対応できます。しかし、新しいメンバーが組織に馴染むには特別な努力や配慮が必要になります。そのため、コミュニケーションスタイルが変化することが予想されます。


●ITリテラシーの向上とリモートワーク環境の設定

 リモートワーク対応のため既存の業務システムからの切り替えが求められると予想されます。クライアントからの要請もあるかもしれません。
 例えば、オープンクラウド(複数のIT企業がジョイントすることで、有益なクラウドサービスを提供し活用できる形態)への移行などです。 また中小企業では、システム構築や環境の異なる従業員のPC環境を再設定するなどの対応は難しいでしょう。そのため、従業員個人がITリテラシーを持つことが求められます。
 さらに、間接部門の業務には、オフィスの環境整備や賃料管理業務に加えて、在宅勤務充実のための手当の充実や情報提供などが求められます。


●集合研修での能力開発の制限

 今後は、受講者全員が同一の時期と場所に集合する研修の実施は行いにくくなる一方で、ITリテラシーや変化したコミュニケーションスキル、業務遂行手法の変更など、新たな能力開発ニーズは高まると予想されます。


● 短期的な採用環境の改善と中長期的な売り手市場への揺り戻し

 採用者数を限定する企業が複数出ることが予想され、採用難易度は低下するでしょう。しかし、人口減少傾向は変わりません。そのため、数年後からは採用難になると予想されます。採用難度が変わることによって、入社者の質と量の変化に悩まされる企業は増えるでしょう。


●非金銭報酬の提供が難しくなる

 多くの企業が親睦会や社内運動会などの社内イベント、定期的な飲み会、全社集会での報奨などを行っています。しかし、それらのイベント開催が難しくなることが予想されます。


● 企業へのロイヤリティ低下で離職増加の可能性

 親睦会や社内イベントが減少することで社員が顔を合わせる機会が低下します。それにともなって企業風土の構築や愛社精神の低下が予想されます。
 また、リモートワークの環境充実に投資している企業や、先進的な取り組みを行っている企業に関心が集まり、変われない企業では離職が増える可能性があります。


●第2波・第3波到来への備え

 本稿の編集は7月上旬に行っていますが、感染拡大低下から一転東京都を中心に感染者数は増加傾向にあり予断を許しません。
 また、在住、在勤エリアで拡大はしなくても万が一ピンポイントで自社において感染者が確認されたり、第2波・第3波が到来したりした場合、中小企業であれば大きな影響を受けます。当然、リモートワークに移行することが求められます。
 ここまでのまとめを図1に示しましたので再度確認してください。

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●コロナ禍の対応について

 コロナ禍に対する、・「一般的な対応」と「継続したときの副作用」・「抜本的な対応」と「副次的なメリット」を、図2・3にまとめたので確認してください。

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抜本対応の実行に向けた人事施策の注意点

●人事施策のドーナツ化現象

 新型コロナウイルスの影響の有無にかかわらず「等級・報酬・評価・育成・採用・退職」はそれぞれ課題を持っています。これに対して、企業内の各担当と外部ブレインが協力し、個別に対応することで解決します。

例えば、等級・報酬・評価は人事制度の運用担当チーム、あるいは一般的な組織や人事コンサルタントが対応します。また、育成は教育担当チームあるいは研修会社が対応します。採用は採用チームあるいは採用コンサルタント、退職は労務チームや退職金制度構築コンサルタント、社労士などがそれに該当します。
 個別対応は速度を生む一方、全体の整合性確保が次第に難しくなり、時として相反する意思決定をしてしまうことがあります。これを「人事施策のドーナツ化現象」と言います。

●採用した人材が現場で活躍できない

 現在、採用チームに任せて、彼らが考える「良い人を○人」を、ブランド校や現在の従業員の卒業校、馴染みのある学校に対して集中的に採用活動を行い、上から順に内定を出していたとします。
 確かにこの方法は効率的ですが、リモートワーク進捗により求める人物像に変化が生じ、入社後に上手く活躍できない、考えが合わないなどの理由で離職者が多くなってしまう懸念があります。

●年功制を排した制度で起きる

 年功給の発生コロナ対策の結果「頑張った人に報いたい」という方針の下、評価制度を変更しても、育成が伴わなければ評価制度は充分な効果を発揮しません。
 例えば、現場では「D最低評価だと昇給無しでかわいそうだから、D評価は付けない」「S最高評価は周りとの差が付き過ぎるから避けたい。よってSとDを減らしA〜Cに収斂させる」といったような運用が行われ、実質年齢給が継続している企業が多く存在します。


●昇格に必要な能力を身に付ける研修がない

 マネジメントができるようになって欲しいと考え、管理能力が向上すれば報酬を上げるような等級・評価制度を設計している企業は比較的多く存在します。そのために考課者研修やリーダーシップ研修も多くありますが、集合研修が難しくなると、その能力開発が難しくなる可能性があります。
 結果として、奇跡的に成長を遂げる人が出てくることを願うか、実態にそぐわない人を無理矢理昇格させるなどのねじれが生じる可能性があります。


人事戦略の策定で期待できるメリット

 人事施策のドーナツ化現象を解消するために、人事施策に一貫性を持たせると以下のようなメリットが生まれます。


●経営層にとって

 経営戦略の実現のために必要となる人的生産性の向上を実現することができます。

●現場管理者にとって

 事業部戦略や機能戦略の実現が可能となり、また、人事制度や運用の軸が明確となるため、人事の理解が容易になるとともに活用が容易になります。

 

●従業員にとって

 入社後のモチベーション向上及びスキルアップの指針となり、また、入社や退職の意思決定要素としても活用でき、ミスマッチなどによる離職低減やぶら下がりリスクを回避しやすくなります。

 

●人事部にとって

 無数に考えられる施策を選択する根拠として活用できます。よって、成果向上にもつながります。

 

PDFは以下よりご覧ください。

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