くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

採用に繋がる労働基準法hacks

山本遼

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最近そこらの道を散歩しているときに出くわした、とある政党のポスター。

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「8時間働けばふつうに暮らせる社会へ」

確かに理想的ですね・・・?でも、この画像では9時~17時で働くイメージになっている模様。しかし、この広告には少し問題があります。

 

労働基準法 第34条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。 

  これによって、労働時間が8時間以上の場合は1時間休憩を取らせなければなりません。 そのため、8時間働けば9時間の拘束が必要になるわけです。
そのため、9時~18時か、8時~17時で描く必要があります。

 

 と、まあこういうツッコミはさておき、法に則ると「9時~18時」とせざるを得ませんが、労働力不足で売り手市場になりがちな昨今です。少しでも労働条件を良さそうに見せて、採用力を高めたい経営者の方もいらっしゃるかと思います。
そこで、労働時間に関する裏技?を使うことで他社に抜きん出ていきましょう。


裏ヒント:少しだけ定時を短く見せ、かつサービス残業を促す

 8時間働かせると1時間休憩になりますが、6時間以上8時間未満の場合は休憩時間は45分で済みます。そのため、

所定労働時間を7時間55分にすることで休憩時間は45分で済む

という技を発動することが出来ます。これで、20分ほど退勤時間を短くすることが出来ます。

定時:9時~18時 
  → 9時~17時40分 

  僅かなことですが、非常に短そうに見えます。これは300円のお菓子が298円になっていると凄く安くなっているように感じる端数価格戦略の人事版とも言えます。

 

 ただし、ここで注意するべきことは、「定時は8時間未満なので休憩は55分で良いが、8時間を超えた場合は、やっぱり休憩時間を1時間取らせる必要がある」ということです。既に7時間55分働かせてしまっていますので、少しでも残業させると休憩時間不足=労基法違反 になってしまいます。
 そこで「残業前に15分の休憩時間を設定する」という対応が必要になります。したがって、残業開始時間は17時55分~ となります。

 なんだ、結局見た目だけの問題じゃん、という声も聞こえますが、実際は違います。

 こういう「残業前の15分休憩」はだいたいみんなが無視して働くので、サービス残業が手に入ってしまうわけです。


表ヒント手帖:従業員の個別事情に対応する

 法の盲点をこういう悪い方法で使うかどうかはさておき、この考え方には別の使い方もあります。
 それは「時短勤務の人の事情に配慮する」ことです。8時間ではなく6時間勤務を希望する方は多くいらっしゃいますが、多くの企業では休憩時間をフルタイムの人と合わせて1時間取らせているがために9時~16時で拘束しているケースが多いようです。

 しかし、そもそも8時間未満の場合は45分で良いため、9時~15時45分の拘束に変えることが可能となります。

 

 また、こちらも労働時間を5時間55分に変えてあげれば、そもそも休憩時間の設定自体が不要となる為、9時~14時55分に短縮が可能となります。ここまで短縮できれば、育児中の女性や副業希望者の採用も進められそうです。

 


*「表ヒント手帖」の手法は休憩時間の一斉付与の原則(全員同時に取らせなければならない)に抵触するため、労働組合または従業員過半数の代表との合意が必要になります
*本件に関しては、各社調査の上ご対応ください。