くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

相手の期待値をコントロールする質問のテクニック

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顧客満足度やフィードバック面談における部下の納得度は、

こちらが提供できる結果÷相手の期待

という数式で計算できます。一般的には、相手の期待を把握した上で、相手の期待を上回るよう努力することで解決出来ます。しかし、こちらが提供できるものが既に決まっている場合はどうでしょう。(既に評価結果が決まっている場合など)相手がこちらに対する期待を引き下げることで解決出来るかも知れません。

 

人間には、「自分が思い出しやすいことを自分にとって重要なことだと錯覚してしまう」という特徴があります。

 逆に言うと、なかなか思い出せないことは重要では無いと考えてしまうわけです。

 例えば、箇条書きで構いませんので、今抱えている仕事を書き出してみてください。最初の方に書けた仕事はきっと重要だと認識していることでしょう。一方、最後の方に書いた仕事はどうでしょうか。「まぁ今は私が担当しているけれど、本来私がやらなくても良いことだし、出来れば誰かに引き継ぎたいなぁ」と思っているようなものではないでしょうか?

 

 このように、【思い出しやすい=重要】【思い出しにくい=重要ではない】と考えてしまう性質を使うと、相手の期待値をコントロールすることが出来ることがあります。

 

退職しようとしている部下に対して

 例えば、会社に不満を持っているから辞めたいと考えている部下があなたのもとに相談をしに来たときに投げかける質問として、以下2パターンが考えられます。

A:「ウチの現状についての不満があるってことだけど、具体的に3つ挙げてくれる?」

 

B:「ウチの現状についての不満があるってことだけど、この際だからできる限り多く挙げてくれる?あ、今まで何回かこういう話をしてきたんだけど、こういう質問をした場合、10個以上出る事が多いかな」

 

 Aの質問に対しては、どのような人でも簡単に挙げることができるでしょう。しかし、Bのように10個となるとどうでしょうか?4-5個まではテンポ良く出たとしても、すぐには思いつかないことが多いのではないでしょうか。

 

 そうすると、相手の頭の中では「普通10個ぐらい思いつくらしいのに、私は5個しか思いつけなかった。と言うことは、自分はそんなに不満に思っていないのではないか?」と考えてしまうわけです。

 

 ※退職引き留めの効果を保証するものではありませんので悪しからず

 

フィードバック面談での活用

 このテクニックは、人事考課結果のフィードバック面談の時にも有効だったりします。

 

 得てして、部下は自己評価が高めなものです。5段階評価なら、だいたい上から2番目(通知簿なら4)ぐらいに自分を位置づけてきます。

 「自分は良い評価を受けているに違いない」そんな自信満々な部下に対して、あなたはやや低い評価をつけました。 そして、今からその評価を伝えなければならない…考えただけでも気が重くなります。

 最近よく言われる方法だと自己評価を聴いて→あなたの評価を伝える という流れです。この流れ自体は必ずしも悪くはありませんが、部下の自己評価とあなたがつけた評価に差がある場合、きっと「アナタの評価を伝える」のステップではあなたは非常に雄弁になることでしょう。

 「確かにあなたは今回活躍をしてくれた。でもね、○○というところでは大きな失敗をしているし、△△も満足だったとは言えない。それに~~~~~」 

 部下はアナタの話を聞きながらも、ヘイト感情を高めてゆきます。

 「だから、キミには■■という取組みをして欲しいのです」 

 ここまでくると、あなたの指導は部下の耳に届くことはないでしょう。

 

 そんなとき、このテクニックを使ってみてください。

「今回の考課期間で悪かったなと思うところを3つ、良かったとおもう点を10個挙げてくれる?」 

  多くの部下は10個も答えることは出来ません。そのため「思ったより悪かったのかも」という気持ちを作ることが出来ます。そういった下地をつくっておくことで、あなたの評価を腹落ちさせ、指導に活かすことが出来るかもしれません。

 

是非、試してみてください

賃金カーブ分析のノウハウ(発展版)

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本記事は前回記事の賃金カーブ分析の発展番です。先にこちらを読んでいたく事をお勧めします。
 

同業他社との比較

 自社の賃金カーブに加え、厚生労働省が提供している賃金構造基本統計調査のデータを用いることで、同業他社や他業種と比べ、自社の給与が十分なのか・見劣りするのかを分析することが可能です。こちらのやり方も、今までのやり方と同様、自社の賃金カーブに賃金構造基本統計調査のデータを重ねることで分析することが可能となります。

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 賃金構造基本統計調査は、業種・地域・企業規模毎のデータを取得することが出来ますので、必要に応じて使い分けると良いでしょう。
 例えば上記のような形になった場合、入社直後は他社と給与が変わらないが、30歳前後から差が明確となっているということがわかります。このような状態を放置していると、入社から手塩に掛けて育成し、働き盛りになった頃に離職してしまう…という問題が発生してしまうわけです。
 
 

年功度合い

 多項式近似曲線を2次関数で表示した際のAx2+Bx+CのAの値によって年功度合いをある程度推し量ることが出来ます。
 最初のAが正であるということは、下に凸(懐かしいですね)の賃金カーブであると言うことなので、最初のウチは昇給し辛く、後になってからぐぐっと上がる昇給の仕方をするということです。

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 つまり、20-30歳の時の昇給の仕方より、50-60歳の昇給の仕方の方が大きくなると言うことでもあります。(≒年功的)
 また、年功的な運用でなくとも、管理職昇格時にかなり大きく昇給する場合、後からの上がり幅が大きくなるためこの形になることがあります。
 
 逆に、Aが負であるということは、上に凸の賃金カーブであるということなので、若いうちの昇給具合が大きいと言うことでもあります。

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 そして、Aが0に近い場合は、1次関数的ということなので、どの年代でもほぼ同じぐらいの昇給をすると言うことになります。この図では右肩上がりで記載していますが、全く昇給しない場合(AもBも0)も同様です。

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まとめると:

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年功的・非年功的 どちらが良いの?

 Aが正の方がよいのか(年功的)・負の方が良いのか(非年功的)については、一概にどうとは言えません。企業の考え方次第です。これが問題になるのは「年功式で人が確保出来なくなってきた」ときと「意図してないのに年功的になっていた」という場合です。
 
 年功式で人が確保出来なくなってきた ということについては、多くの企業で見られています。転職がアタリマエになってきた昨今、年功的昇給を設計している企業は、非年功昇給をしている企業に比べて若手の給与が見劣ります。そのため、若手の離職や採用力の低下に繋がりやすくなります。
 
 意図していないのに年功的になっていた というのは、主に制度の運用が問題であることが多いです。制度としては年齢で昇給しないように作っているのに、現場が勝手に年功昇給的な運用をしているということですね。 例えば、A評価で9000円 B評価で6000円 C評価で3000円 D評価は昇給無し、としている企業において、「本来であればD評価が妥当だけど、昇給しないのはかわいそうだからC評価にしておこう」とかするような運用がはびこると、それはすなわち年功昇給が発生するわけです。
 
 
 

昇給度合い

 次に、多項式近似曲線を2次関数で表示した際のAx2+Bx+CのCの値によって昇給程度をある程度推し量ることが出来ます。
 
 Cが最終的な到達地点(定年が60歳なら60歳時点の給与)とほぼ変わらないということは、その企業に何年居てもそれほど給与が上がらないということになります。

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 逆に、Cがマイナスになるようなことあがれば、入社してからの給与の伸びがかなり大きいということとなるわけです。

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 ほぼ昇給しない企業であるということは、その企業の中で積んだ経験が収益にほぼ影響しないと言うことでもあります。例えば、アルバイトで賄われているような職場はほぼ昇給がありません。(その仕事が悪いと言っているわけではありませんが、レジ打ちのような仕事は採用時点の給与から大きく変動することはありませんよね)
 
 

最後に

 このように、賃金カーブ分析からは、自社で顕在化していない様々な問題点を見つけ出すことが出来ます。
 
 最後にお知らせ。賃金カーブ分析について近代中小企業に寄稿することとなりました。2019年の8月号に掲載予定ですので、ご興味のある方は是非お手に取ってください。(書店売りしてないんですけどねー・・・)

2019/07/19 セミナー実施 「世間が人手不足でも!! 優秀な人材を確保できる人事の仕組みと仕掛け」 @大阪商工会議所南支部

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大阪商工会議所南支部(天王寺)にて、7/19にセミナーを実施致します。

無料あるいは安いセミナーって基本的に「うちの商品買ってよ」的なものが多いですが、あんまりそういうのもなあと思うのでミッチリ内容を詰め込んでみました。

 

■開催日時

2019年7月19日(金)
午後6時30分~午後8時30分

 

■場所

大阪商工会議所 南支部 会議室
大阪市天王寺区堀越町13-18 銀泉天王寺ビル5階
TEL:06-6771-2211

 

 

■概要

1.人口減少時代に採用の現場で起きていること、企業がすべきこと。
2.人事が「何をするべきか?」を考える前に、考えるべきこと。
3.採用において変わるべきこと、変えてはいけないこと。
4.管理職を嫌がる若者を活躍させるためにすべきこと。
5.生産性向上のために評価制度で出来ること。
6.おわりに:まとめ

 

 

お申し込みはこちらから↓

www.osaka.cci.or.jp

悲惨な交通事故報から何を学び、どう仕事に生かすことができるか

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悲惨な交通事故報道、それをみたとき、感想は大きく5つに分かれます。

1.「痛ましい事故だ…」「ぶつけられた奴はかわいそうに」といった感想

2.「Aってのは間抜けな奴だな」「最近運転が下手くそな奴が多いな」といった感想

3.「無理な右折はしないように気をつけないと」「交差点で自分が直進するときは対向車に気をつけよう」といった感想

4.「だろう運転はしないようにしよう」といった感想

5.「コミュニケーションにおいて伝わっている“だろう”で考えないようにしよう」といった感想

皆さんはどれでしょうか?

回答次第で、これからの出世に大きく影響するかも知れません。

 

記事は以下から。

 

wezz-y.com

「それでも無理な右折をする人 」と「一を聞いて十を知る人」とを分ける決定的なポイント。

大津市で直進車が居るのに無理に右折しようとした車が直進車にぶつかって、園児2人が巻き添えになった…という事故がありました。

悲惨すぎるニュースだったため、報道でも大きく取り上げられていますし、恐らく誰しもが一度はニュースを見たでしょう。

 

一方で。

これだけ報道されているにもかかわらず、車を運転していて、直進車が居るのに無理に右折する車を見ることはまだ多々あるわけです。実際、僕が直進で交差点に入ろうとしているときに右折で横切っていった車も二度見ています。

 

で、これは経験をしたときの心の解像度が全然違うと思われます。 解像度が違うというのは、例えば今回の事件を見て、自身の行動にどう反映するか?というのを見ると判りやすいです。

 

 事故の報道を見たときの心の解像度判別法

解像度別に概要と予想されるリアクションを書いてみます。皆さんも自分がどれに該当していたかあてはめてみてください。

 

解像度レベル0の人:全く何の教訓にもしない人

「わぁかわいそうな事件だ」とか「間抜けな奴も居るもんだねぇ」と言ったか言わないかはさておき、他人事だと捉えている、というのがポイントです。ニュースを消費して生きてる人です。

 

解像度レベル1の人:右折するときは気をつける

「右折するときは気をつけなきゃねー」と言っているイメージ。自分の身に置き換えている点は非常に素晴らしい。そして、表面から見える理由をちゃんとケアしようとしています。

 

解像度レベル2の人:右折に限らずだろう運転をしないようにしようとする人

だろう運転で右折したから事故ったんだなー。」と言っているイメージ。

 

解像度レベル3の人:コミュニケーション全般で勝手な思い込みを排除しようと注意を払う人。

 

相手に言わなくても伝わるだろうとか、判ってくれているだろうとか、運転に限らずだろうで行動すると危ないよな と考えられるような人。車の運転と言うところからさらに一段階踏み込んで考えているわけです。

 

 レベル3まで学びを深められる人のことを「一を聞いて十を知る」と人は評します。レベル1で止まる人は今回の事件以外で、多数のだろう運転による悲惨な事故を目にしなければだろう運転の怖さを学び取る事は出来ません。きっといくつかの事故を目にし終えた頃には最初の事故のことなど覚えていないのでしょう。

 だから、経験から学ぶ時に量に頼らざるを得なくなり、量で対処しようとすると多くの場合実現できなくて破綻します。

 

 

一を聞いて十を知るためには?

 一つの経験から、多くの場面で使える教訓を引き出すためには、問題を深掘りして理由を見つけるという事が欠かせません。

 

 今回の例で言うと

【事象】無理な右折があった

これに対して、それは何故?と問い掛けることで、「相手の車が止まってくれるだろうと考えたから/あるいは自分はいけるだろうと思った」となります。

 ここまで汎用化すると、だろう運転は危ないな、という教訓を得られます。

こうなると右折だけに限らず、運転全般においてだろう運転をすることは無くせます。

 

そこからさらに、だろうで行動すると失敗する事って運転だけか?と考えつくと、「コミュニケーションにおいてだろうを使わないようにしよう」という教訓を得られます。

車の運転という割とレアなケースだけに終わらず、日常生活でも活かすことが出来るわけです。

 

一を聞いて十を知る人になるための簡単なトレーニング

 このブログを閉じた後、目にしたニュースに対して、「このニュースから自分の生活を良くするための教訓が得られるとしたら、どんなことだろう?」と考えてみることで、経験からの学びの質は格段に向上します。

 多少難しくても「教訓はある」という前提で無理矢理やってみることです。

 

 

追記

・もしアナタがレベル3以上の教訓を得られたなら、私より高い解像度を持って考えられていることの証拠になります。(逆に言うとレベル3までしか考えつかなかったのが僕の限界ってこと)

 

・レベル2以降については、解釈と考える方向性次第で複数の解があり得ます。例えば、今回はコミュニケーション方向に進んでいますが、「自身の能力と相手の能力をちゃんと把握しておかなければ失敗する」方向に行くのもアリだと思います。彼を知り己を知れば百戦殆うからずってやつですね。

 

・稀に、教訓の引き出し方をミスってしまうことがあります。例えば「交通事故の多くはプリウスに乗っている!危ないから乗らない!」とか言う奴ですね。真偽の程はさておき、上記の意見には以下のような穴もあるわけです。

  ・そもそもプリウスが世の中に多いから事故車両もプリウスが増えるのでは?

  ・プリウス自体になにか事故を誘発する原因があるわけではないのでは?

   (最近シフトレバーの作りが独特だからという意見もありますが…)

  ・プリウスの購買層に偏りがあるのでは?(例えば高齢者層に偏っているとかですね)

 本当にプリウスのせいなのかたまたまなのかは判りません。ほんまにそうか?と疑って掛かる必要がある訳ですね。(あとそもそも大津市の事件に関してはプリウス関係ない)

 また、「車の運転は危ないからすべきではない」と考えてしまうときもあります。これもこれであながち間違いでは無いんですが、利便性を捨てて良いのか?という所は考えるべきだったりします。

 こういうのを過度な一般化、と言います。

 

「まず自己分析」をやめて最高に生産性の高い自己PRをしよう

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wezzy連載第6回目が掲載されています。

 

長い人生ですから、どこかのタイミングで就活や転職活動をする必要が出て来たりします。必要な時間ではあるわけですが、就活や転職活動そのものに生産性はありません。特に、自己PRで何を語るべきか?は、最も時間と精神力が削られます。

 

そんな自己PRの効率的な進め方は以下リンクからどうぞ

wezz-y.com

労政時報に寄稿しました。 フィードバック面談に苦手意識のある管理職への処方箋。

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2019.4.28付 労政時報に「部下を納得・腹落ちさせるフィードバックのノウハウ」を寄稿しました。

多くの企業で人事考課・フィードバック面談が制度としてあります。しかし、得意だと思っている管理職は少ないものです。

何から手をつけていいか判らない・でもやらなきゃならない・・・

 

そんな方に、コレさえ読めば大丈夫でしょう、という目線で書いています。

*転載出来ませんので、是非お買い求めください。過去記事ですがweb労政時報からお読み頂くことが出来ます。

 

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https://www.rosei.jp/readers/login.php

 

管理職の給与は何故高いのか?そして、管理職になる為にはどうしたらよいのか?

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wezzy連載第5回目が掲載されています。

 

管理職の給与は何故高いのか?そして、管理職になる為にはどうしたらよいのか、というものです。

 前回のwezzyにて、給与の上限は一人あたり売上高を超えることはない、というお話をしましたが、管理職以上ではそれを超えることが出来ます。

気になる方はこちらから

 

wezz-y.com

 

管理職になった後に、よりパフォーマンスを発揮する為の行動や考え方などについては以下のカテゴリに纏めていますが、結構記事が多いのでまずはこれから読んで貰えたら判りやすいかも

www.kuchibashi-consulting.work

 

管理職向けカテゴリはこちらから

www.kuchibashi-consulting.work

 

 

 

■2019/04/04 9:55追記

wezzy3位になりました。叶姉妹さんの秘密に勝った・・・!?(一瞬だけの話)

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「バランス感覚がある」「人や物の良いところを見つけることが出来る」ことは強烈な短所にもなる

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今日は、一般的に言われている長所が、もしかしたら短所になっているかもしれませんよという話です。

 

 働き方改革については以前以下のような連続エントリで記載しました。

www.kuchibashi-consulting.work

 ホワイトカラー職場こそ製造現場の業務改善のプロセスを真似ましょうという内容です。これはこれで内容的には間違っていないつもりだし、本当にこの通りやってくれるのであれば確実に業務は圧縮されます。

 例えば、業務の要不要を考えるとき、「この業務は本当に何かの効果を得ているか?」という目線で見ます。折角作っていたレポートが実は誰にも読まれていなかったことが判れば、その業務をやめることに反対は示さないでしょう。

 しかし、現実の企業の現場では「見てないわけではない」「ちょっとだけ参考にしている」「無きゃないで誰かが少し困る」みたいな業務が多いわけです。そして、「どんな人やものにも良いところはある」と考えられる人は、このようなちょっとした良いことを見つけてしまいます。あなたの会社で業務削減が進まないのはそのためです。

 そして、「バランス感覚がある」「人や物の良いところを見つけることが出来る」ことが出来る人は、悪意無しに業務のメリットを見つけてきます。それにより、多少のリターンがあろうが費用対効果的が悪い業務のメリットが強調されてしまうわけです。彼らは以下のような言葉を使います。

・この業務を待ってる人も居るんじゃないだろうか
・あったら何かのときに参考になるから
・念のためにやっておいても良いんじゃない?

 

対策

 上記のような症状が起きたとき、まずできる対策は2つあります。

1.業務に価格をつける

 社内での業務ばかりをやっている人は、あまり馴染みが無いかも知れません。しかし、仕事でやっている以上あなたの業務にはいくらかの原価(人件費やPCリース料など)が掛かっているはずです。これを全て計算してみることです。
 人件費であれば、あなたの年収(出来れば会社が負担している社会保険料と退職金積立分、PCリース料も加算しておくと良い)を総労働時間で割って時間単価を計算し、時間単価にその業務に掛かっている時間を掛けて、一つの業務の製造原価を計算します。

 

 例えば年収600万円の人であれば、諸々込みで800-900万円ぐらいになるので、900万÷2000時間=4500円 となります。そして、その業務に月2時間かかっているのなら、4500円/時間×2時間/月×12ヶ月=108,000となります。 

  
 で。「確かに○○という業務には××というメリットがあることは事実だが、108,000でやる価値はあるのか?」と考えてみると、妥当性判断はしやすくなります。

 

2.今その業務をやっていないとして、新しく始めるか?

 断捨離の考え方の応用編みたいなものです。洋服を捨てるかどうか判断するとき、「もしかしたらまた着るかも知れない・・・」となって悩む例は多いです。そうなるといつまで経っても捨てることは出来ません。

 そこで、「今この服を持っていなかったとして、この服がお店に並んでいたとしたら買うだろうか?」と問い掛け、買わないなと思ったら捨てるというルールを設定するわけです。
 業務も同じです。「今、やっている」と考えるから削減できませんが「わざわざ新しく始めるとしてこの業務をやるか?」と考えると、やる業務ってどれぐらいありますか?

 

そもそも何故業務削減が邪魔されるか

 上記に記載したような業務削減が邪魔されるのは、人間には「失うことを嫌がる傾向」と「保有したら高く評価する傾向」があるからです。そして、バランス感覚があり優しい人によってメリットにフォーカスされ、この傾向は特に強くなります。

 

失うことを嫌がる傾向とは

 人間はリスク回避的な考え方をしてしまうので、同じ金額なら得るより失うことのほうを大きく評価するという特性があるからです。同じ100円なら、得るときは100と評価出来るけど、失うときは220ぐらいになるという研究結果もあります。(そのため、勝ち負け半々のギャンブルを持ちかけられても断る人が殆どになります。)

 

保有しているものを高く評価する傾向とは

 また、一度保有したものを高く評価するようになるという特性もあります。皆さんが自身のものを売りに出すとしたら、たとえ中古だとしても世の中の値付けより基本的に高くしてしまうようなものです。中古本を売りに出したとき、思ったより低くて驚いた経験は誰しもあると思います。これについてはハーバード大学のエレン・ランガー教授が実証しています。


 保有している者を高く評価する傾向をイメージするのに最適であり最悪な例として

「自分の子供に値段をつけたら幾らでしょう?」と考えてみるものがあります。

 「値段なんかつけられないよ!」と思った人が大半ですよね。僕もそっち側です。そして、値段がないということは0円じゃなくて∞円を想定しているはずです。

 よりドライな人は具体的に「○○億円以上」などの数値化に成功したと思いますが、それでも市場(なんか無いけど)価格より低く設定することはないでしょう。

 一方で、他人の子供を買うことを考えると(コレも最適であり最悪な例ですね)、割と具体的にコストやらなんやらのことを検討したのではないでしょうか。

 売る時はしないのに、買うとなるとコストの計算をし始める。残酷な考え方ですが人間らしい考え方でもあると思います。

 

まとめ

 

 業務を削減するときは上記の「失うことを嫌がる傾向」と「保有したら高く評価する傾向」を取り去ってやる必要があるわけです。


 どちらも、何となく嫌だ、という気持ちになってしまうのでそこで思考停止します。しかし多くの人は頭が良いので数値化されれば判断できるようになります。10と15のどちらが大きいかということは判断できます。

 (そうはいっても、仕事には産みの苦しみが伴うし、仕事の成果は自分の子供みたいなところがありますが)

 目標を成功させるためには、数値化することは欠かせない、というのはよく知られたことです。そして、これをせずに「廃止すべきか・いなか」の議論をしているから上手く行かないわけです。

勝ちパターンの見つけ方

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wezzyの第4回目が出ています~

 

普段は「人事制度」ということでお話をしていますが、人事って会社での働き方に通じているところが多分にあります。なので、悪用して出世することもできるし、上手く使って成果をあげることもできますよね、というようなスタンスで書いています。

 

このやり方は、評価基準の作り方にも通じるところがありますので、是非どうぞ。

 

wezz-y.com

 

2019/02/19 追記

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2019/02/19 23:55時点でwezzy記事ランキング4位になりました~!やったね~!

楽しんでもらえるようまた記事書きます!