くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

多くの企業にとって、人手不足は質の低下にも直結する理由

山本遼

昨今、人手不足という言葉は非常に多くのところで聞かれています。

日本の企業では22歳で入社して再雇用などをへて65歳まで働くのが一般的ですが、この人口はこの30年間で900万人ほど減少しています。(正確には20歳~64歳人口。2020年の推計値6783万人と1990年の実測値7690万人の差。)

*出典は2010年までは総務省国勢調査
2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

 

また、今後20-64歳の層に入ってくるであろう19歳以下の層に至っては、1990年の3269万人から2020年には2015万人と、1200万人も減ることが見込まれています。

 

こんな状況では、企業でも人手不足が起きるわけですし、今後はそういった流れがさらに加速することになります。

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と、ここまでは誰しもが知っている話でしょうが、実はこれだけ減ると質の低下も起きてしまうわけです。

 

人手が減ると質が下がる

よく、2-6-2の法則とか2-8の法則とか言われたりします。これは、企業において

・出来る人が2割

・普通の人が6割

・出来ない人が2割

ぐらいだろうという経験則に基づいたものです。

この図は、普通の人たちを「ややよく出来る」「やや出来ない」に区分しています。

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そして、その年の若者を、

・テレビでもCMをやっていたり、みんなが行きたがるような超ブランド企業

・まあまあ名の知れた有名企業

・その他の一般的な企業

が取り合っています。

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超ブランド企業はよく出来る人だけを採用することが出来ます。

そして、有名企業はそのおこぼれとなったよく出来る人と、ややよく出来る人を採用し、

その他の企業はややよく出来る人・やや出来ない人・出来ない人 を採用することになります。

 

そして、ここから人が減っていくわけですが、人が減ると言っても、単純に「出来ない人から順に」減るわけではありません。全ての層からまんべんなく人が減っていくわけです。

 

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すると、採用の現場でどのような減少が起きるかというとこうなります。

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超ブランド企業にとっては、取れる人も数も特に問題になりません。今まで通りの人数と質が確保出来ます。

一方で、有名企業にはハイパフォーマーが落ちてくることがなくなります。そのため、まあまあよく出来る人たちを全力で確保しに行くことになります。数を合わせるためにやや出来ない人にまで手を回すかどうかは企業の判断次第です。

その他の企業にとっては悲惨です。いままで取れていたやや出来る人が居ないどころか、敬遠したいぐらい出来ない人を採用しても数を充足させることすら出来ないわけです。

 

まあ、これは結構簡略化している考え方なので、凄く良く出来る人たちが超ブランド企業を敬遠して一般企業に行く、なんてことも起きるわけですが大きなトレンドとしてはこのようなことが起きるわけです。

 

採用担当者に、「数が無理なら質だけでも確保せんかい」と言ったところで人手不足だと質も下がってしまうのはある程度やむを得ないんですね。

 

解決策はないのか?

「人が採れない・質も下がる、大手との差は開くばかりじゃ!!」と嘆いていても仕方ないわけです。優秀な人を確保するためにどうしたらよいか。大きく書くと以下のような感じの解決策が提案出来そうです。

解決策1.社内の「良い人」を逃がさないようにする

解決策2.社内の人を育成して「良い人」に変える

解決策3.「良い人」の定義を変える

解決策4.今まで目を向けていなかった層に目を向ける 

 

 

解決策1.社内の「良い人」を逃がさないようにする

例えば、最近30歳ぐらいの出来る人が辞めていく会社は多いです。山本五十六の名言から

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめて育てた 部下が退職」 

 という川柳まで出てくる始末ですね。では、何故その方々が辞めていくのか理由は把握出来ていますか?そして、その穴を埋める施策は行えていますか?

当ブログでは、基本的に部下の不満を埋めることを主眼に置いた人事施策はやるべきではない、と言うスタンスですが、企業にとって引き止めが重要になることもあります。 公平性や古い慣習と共に倒産する覚悟があるなら好きにしたら良いですが、そうでないなら理由を検討してみるべきです。

 

 

解決策2.社内の人を育成して「良い人」に変える

次に、社内の人を育成するという方法。当然と言えば当然ですが、

・OJT頼みで研修をやっていない企業

・自社のビジネスに役立たない研修メニューを強制している企業

・業務から学ぶ仕組みを作れていない企業

なんかは結構多いです。自社にとって良い人に繋がるか?という目線で研修メニューを見直してみると良いと思います。

 

解決策3.「良い人」の定義を変える

三つ目は、良い人の定義を変えるという方法です。自社にとって本当に良い人って何?ということを考えるわけです。よく言われますが、リーダーシップとか体育会系出身者とかって、本当に全ての企業で必要ですか?

「無いよりはあった方がマシ」だとは思いますが、必須でないなら採用要件から外してしまって良いはずです。リーダーシップは無いけど技術力はある人を欲しがる企業は多いでしょう。また、押し売り営業に限界を感じてコンサルティング営業に切り替えた企業にとっては、旧来の「押しの強さ」が逆にアダになっていることさえあります。(ヒアリングの方が重要だから)

 

解決策4.今まで目を向けていなかった層に目を向ける

 最後は、今まで目を向けてこなかった層にも目を向けてみると言うことです。要は「健康優良な日本人男性」以外です。女性や高齢者、外国人、障碍者ですね。他社がまだ採用・活躍推進仕切れていない今始めておかないともう遅くなります。そもそも日本人男性でなければ本当に駄目な仕事ってありますか?

 僕は建設業・製造業・卸売業と、やや古い業界で働いてきましたが、今まで一緒に働いてきた人の中で、尊敬できる人って誰かな?と考えると、半分が女性になります。特に、前職で人事制度の企画・運用をやっていたチームで一緒だった後輩の女の子2人に至っては本当に凄かった。”獣になれない私たち”の新海さん、ぐらいでした。そんなに出来る人たちに出会う可能性もあるのに、まだ「総合職は男性」「一般職のことを”女の子”と呼ぶ」というスタイルに拘っているのか、と言うところですね。

 

 

このように、生き残りの為には様々な方法が考えられるわけです。是非、自社にあった施策を行なってみていただければと思います。